特別対談

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サイバーレジリエンス時代に求められる
ネットワークフォレンジックス

02「セキュリティは経済格差」という問題

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【 この対談は2019年10月に開催され、記事内容は当時のものです。何卒ご了承ください。 】

藤原
セキュリティは技術的側面が非常に強いイメージがありますが、レジリエンスでは経営観点から、事故からの回復も含まれるイメージでしょうか。
門林
経営観点もありますが、地政学的観点もあります。例えば、「迷惑メール」。皆さんもメールアドレスを持っている限り「迷惑メール」が送られてきていると思います。技術的には、もうかれこれ30年ぐらい対策が練られていますが、「迷惑メール」は無くなっていませんよね。なぜかというと、それは「経済格差の問題」でもあるからなんです。
具体的には、発展途上国には迷惑メールを一通送る毎に0.1円、手元にお金が入る人たちがいるのです。日本の物価感覚だとビジネスにはならないですが、現金収入に乏しい発展途上国だと大事な収入源となるのです。
藤原
そうした意味で、「地政学的な理由」が入ってくるのですね
門林
経済格差を含めて考えると、その迷惑メールを書くことで生計を立てている発展途上国の人がいる。あるいは、ニュースにもなりましたがフェイクニュースを書くことで学費を稼いでいる東ヨーロッパの学生がいる。これらは人の行動なので技術的な制御は難しく、彼ら彼女らが経済的豊かにならない限りは無くならないのです。
藤原
機械が相手であれば技術的な対処ができますが、人間が相手となると技術的な観点だけでは対処が難しいという意味ですね。
門林
世間の秀才は、「セキュリティだけやれば良い」「犯罪者を捕まえれば最終的に犯罪はなくなる」「その結果、世の中は安全になる」という発想ですが、現実は甘くない。まず、世界中の人々がインターネットを通じて繋がっている現実があります。
1日1万円使っている人が存在する一方で、1日10円で生活している人がいるという経済格差があります。0.1円を稼ぐことがビジネスになる国と、ならない国があるのです。
こうした経済格差の問題もそうですし、イデオロギーの対立や宗教の対立など、様々な価値観の対立もありますよね。そういったものがすべて、インターネットという空間では現れてきますので、かなり厄介です。
藤原
我々は普段、日本で生活をしていて、夜間、外出してもそれほど怖い思いをすることはありません。つまり「安全な国に住んでいる」イメージを持っています。
しかしながらインターネットを通じて、安全でない国と直接的に繋がることで、地政学的リスクやサイバー特有のリスクなど、我々が思ってもいない様々なリスクに曝されているということですね。
門林
表裏一体なのです。表側では、インターネットを使い世界中と繋がることで、オフショアで開発したり、国をまたいで製品を製造したり、世界中に物を売ったり、世界中からYouTubeの動画を見てもらうことがビジネスになったりと、スケール感のある数多くの事ができるようになりました。その裏側で、発展途上国との経済格差や価値観の対立のようなリスクに曝されるわけです。
結論的には、インターネットなりサイバースペースの利益を享受する限りは、「リスクはなくならない」という認識を持つ必要があります。迷惑メールでさえ、この30年なくならないのですから。
セキュリティを頑張るけど、相手はセキュリティを脅かすことでお金を稼いでいるので、手を変え品を変え攻撃を仕掛けてくる。だからこそ事故はなくならないし、問題もなくならないのです。

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プロフィール
人物 門林 雄基 (かどばやし ゆうき)
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 サイバーレジリエンス構成学 教授
2009年より国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)においてサイバーセキュリティの国際標準化に従事、2013年より同作業部会ラポータ(主査)。
サイバーセキュリティに関する日欧国際共同研究プロジェクト「FP7NECOMA」研究代表者、独立行政法人情報通信研究機構「サイバーセキュリティ研究センター」招聘研究員などを務める。
人物 藤原 礼征 (ふじわら ひろゆき)
トーテックアメニティ株式会社 トーテックサイバーセキュリティ研究所 所長
1974年生・大阪府出身。大阪大学基礎工学部卒業後、大阪大学大学院基礎工学研究科に進むと同時に会社設立。
ソフトウェアアーキテクトとして、ソフトウェアの設計・開発の技術力に内外からの厚い信頼があり、様々な会社や研究機関において研究開発や製品開発に携わる。
2012年「トーテックサイバーセキュリティ研究所」所長に就任。